「イミテーション・ゲーム」を観た

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」を観てきた。

現在のコンピュータの基礎となる理論を打ち立てたアラン・チューリングの物語。

映画は「才能を開花させるきっかけになった少年期」と「ブレッチリー・パークでエニグマの解読に挑んだ時期」, 「戦争終結後、転落に向かう時期」の3つの時間軸で進行する。 この3つが良い具合に絡み、全体を通して悲劇的であるのに、所々に輝かしさであったり、興奮を感じさせられる。 結果的に後味の悪さを感じさせない、むしろ何とも言えない余韻を感じさせてくれる作品だった。

物語のところどころに、さりげなく青酸カリやリンゴがでてきて、チューリングの転落、死を暗に連想させるような演出の巧さも憎い。

映画を観て、チューリングに興味をもった場合は、サイモン・シンの「暗号解読」や藤原正彦の「天才の栄光と挫折ー数学者列伝」を読むといいかもしれない。 平易な文章で、チューリングの業績や人生について記述されている。

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)

また、作中の周囲のチューリングへの接し方やチューリング自身の振る舞いを通して、田中芳樹の「銀河英雄伝説」の一節が頭に浮かび続けていた。

天才が存在すること、天才が組織の中でどう生きるかということ、組織が天才をいかに遇するかということは、それぞれことなった問題であり、三者を整合させることはかならずしも容易ではない

本作や「天才の栄光と挫折ー数学者列伝」,「銀河英雄伝説」は一見異なるジャンルの書籍のように思えるが、天才という存在と、組織あるいは時代との係わりについて問題を投げかけているという点で同種の作品といえるだろう。

銀河英雄伝説外伝5 黄金の翼 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説外伝5 黄金の翼 (創元SF文庫)